借金返済ができなくなった場合に検討すべき債務整理ですが、債務整理をすると生活に様々な影響があります。
依頼を検討している人の多くが、家に住むことについての影響を気にするのではないでしょうか。
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債務整理で生活に影響を及ぼす原因
賃貸借契約についての影響を検討する前に、債務整理で生活に影響を及ぼす原因となる、次の2つの事由について確認しましょう。
ブラックリスト
債務整理をすることでブラックリストに載ることで、生活に影響を及ぼします。
債務整理をすると、相手となる貸金業者は、加盟している信用情報機関に対して、債務整理が始まったことを知らせます。
これを受けて信用情報機関は、信用情報に債務整理をした旨の情報(異動情報)を掲載します。
これによって、信用情報を用いて与信の審査を行う取引が、非常に難しくなります。
このような状態のことを、ブラックリストと呼んでいます。
ブラックリストとなると、住宅ローン・自動車ローン・カードローンをはじめとした借入行為や、クレジットカードの契約・更新、スマートフォンの分割購入などができなくなるという影響があります。
自己破産による各種制限
債務整理の中でも自己破産をする場合に、法律で様々な制限を課されることによって、生活に影響が出ることがあります。
主なものとしては、職業制限と住居の移転が制限されます。
自己破産をすると、破産手続開始決定から復権までの間、宅建氏・警備員・保険募集人のような資格についての職業について制限されます。
また、住居の移転についても、同様に制限されます。
債務整理しても賃貸契約・更新はできる?
債務整理をしても、賃貸契約・更新をすることはできるのでしょうか。
賃貸契約で信用情報に基づく審査がされる場合がある
まず、賃貸契約で信用情報に基づく審査がされる場合があります。
賃貸契約をする場合、どのような場合でも賃料の支払いについて保証人がつくことになっています。
昨今は保証人不要という物件も多いのですが、これは借入をする側としては保証人が不要ですが、実際は保証会社による保証を受けています。
消費者金融や信販会社は、貸金やクレジットカード事業のほかにも、家賃保証事業を行っていることがあり、家賃保証をする際の審査として、信用情報を確認します。
つまり、賃貸の契約をする場合・賃貸の更新をする場合に、信用情報に基づく審査が行われることがあるのです。
このことを年頭に、賃貸契約・更新に影響する可能性がある場合について確認しましょう。
【債務整理前】何の影響もなく契約できる
債務整理前は賃貸契約・更新について、何の影響もなく契約が可能です。
債務整理のどの手続きをする場合でも、ブラックリストとなるのは債務整理に弁護士・司法書士が着手をした通知が、貸金業者に送られた時です。
そのため、債務整理をする前には、ブラックリストになっていないので、賃貸契約や更新に影響することはありません。
もっとも、債務について延滞をしている場合、延滞したことが原因でブラックリストとなっている場合があります。
そのため、債務整理前であっても賃貸契約・更新で審査落ちする可能性があります。
【債務整理中・整理後】契約や更新ができない場合あり
債務整理中・債務整理後は賃貸契約・更新ができない場合があります。
債務整理の依頼を受けた弁護士・司法書士が貸金業者に通知を送ったときから、上述したようにブラックリストとなります。
この段階で保証会社が信用情報を利用して行う審査は非常に厳しくなり、その多くは審査落ちとなります。
この場合、原則として賃貸の契約や更新ができなくなります。
また、債務整理の中でも自己破産をしている場合、今の住居から新しい住居を契約することはできません。
この場合、自己破産手続きが終わった後か、裁判所による許可を得て住居の移転を行います。
ブラックリストが原因で審査に落ちる可能性がある場合の対応策
ブラックリストが原因で審査に落ちる可能性がある場合の対応策としては次のものが挙げられます。
信用情報を審査に利用しない方法を検討する
信用情報を賃貸の審査に利用しない方法での申し込みを検討します。
不動産の賃貸・更新で審査に落ちるのは、ブラックリスト、つまり信用情報に異動情報があるためです。
ですので、審査にあたって信用情報を利用しない会社に申し込みをすれば、ブラックリストが原因で審査に落ちることはありません。
従来どおり連帯保証人を立てることで契約ができる場合や、信用情報を利用しない家賃保証会社を利用している不動産管理会社に相談してみましょう。
不動産会社が家賃保証会社を利用する際に、どの会社の家賃保証を受けているかについては、大手の不動産管理会社などではホームページに記載されていることがあります。
インターネットで物件を探して問い合わせをする前に、ホームページでどこの家賃保証会社を利用しているかを確認してみましょう。
安定した収入があれば審査に通る物件もある
ブラックリストでも安定した収入があれば審査に通る物件もあります。
賃貸契約は生活の基本であり、ブラックリストという状態でもある程度緩和して審査されることがあります。
そのため、安定した収入があり、その収入からは無理なく毎月の賃料の支払いができることが見込まれる場合、審査に通ることがあります。
収入が安定しており、その収入から無理なく支払えるといえる程度の賃料の賃貸物件に申し込みをすることも検討してみましょう。
多少のデメリットがある物件を選べば可能性は上がる
多少のデメリットがある物件を選べば審査に通る可能性は上がります。
賃貸物件といっても借り手がつきやすい物件もあれば、借り手がつきにくい物件もあります。
同じような広さ・築年数であっても、駅からの距離が徒歩3分の物件と、駅からさらにバスで15分の物件であれば、後者のほうが借り手がつきにくいのは容易に想像できますね。
このような借り手がつきにくい物件をあえて選べば、賃貸契約ができる可能性が上がるといえるでしょう。
借り手がつきにくい物件には次のものがあります。
- 駅から遠い
- 築年数が古い
- 建物が古い
- 手入れが甘い
- 心理的瑕疵がある物件である
- 近くにごみ処理施設・下水道処理場・墓地や火葬場などがある
再度ブラックリストによる制限なしに賃貸契約・更新ができるのは債務整理によって5年~7年後
再度ブラックリストによる制限なしに賃貸契約ができるのは債務整理の方法によって5年~7年が経過した後です。
賃貸契約や更新ができなくなるのは、ブラックリストで信用情報による審査が通りづらくなっている時でした。
このブラックリストの状態は永久ではなく、一定期間が経過すれば解除されます。
債務整理の種類・3つある信用情報期間の規定により、ブラックリストの解除の期間は異なるのですが、最長の期間で考えると次の期間でブラックリストが解除されます。
債務整理の種類 | 期間 |
---|---|
任意整理 | 完済してから5年 |
自己破産 | 7年 |
個人再生 | 完済してから5年 |
以上の期間経過後には、信用情報に基づく審査が理由で賃貸契約・更新ができなくなることはありません。
経験豊富な弁護士をはじめとした債務整理専門チームが丁寧に対応!
債務整理によって賃貸物件から追い出されることはあるのか
債務整理によって賃貸物件から追い出されることはあるのでしょうか。
貸主が賃貸物件から追い出せる場合
住居についての賃貸借契約を結んだ場合、契約・法律によって賃貸人は保護されるので、大家がいつでも追い出せるというわけではありません。
貸主が賃貸物件から追い出せるためには、賃貸借契約が終了しているといえる場合であることが必要です。
債務整理をしたからといって即賃貸借契約が終了するわけではない
債務整理をすると賃貸借契約は終了するわけではありません。
2004年に破産法が改正されるまでは、自己破産によって貸主が賃貸借契約を終了できる旨が定められていました。
しかし、2004年に破産法は改正され、2005年1月1日に貸主が賃貸借契約を終了できる旨の定めが無くなりました。
また、任意整理・個人再生などによって賃貸借契約が終了する規定、貸主が終了させることができる旨の規定はありません。
そのため、現在は債務整理のどの手続きをしても、即賃貸借契約が終了するわけではないといえます。
家賃を滞納している場合には賃貸借契約を解除されることがある
債務整理をするようなケースで注意が必要なのが、家賃を滞納している場合です。
家賃を滞納している場合に、自己破産・個人再生をすると、滞納している家賃は手続きの中で免除・減額されることになります。
これによって、賃料の支払いを受けられない場合には、賃貸借契約が解除される可能性があり、その場合には住んでいる住居について退去しなければなりません。
なお、賃貸借契約については、単に滞納があっただけでは解除できず、滞納によって信頼関係が破壊されたといえる場合に、契約の解除が認められます。
信頼関係の破壊については、滞納の期間だけではなく、従来の賃貸借期間の長短、賃料を滞納するに至った事情、その他当該賃貸借関係における諸事情の一切を考慮して行われます。
同じような期間の延滞であっても、契約通りに利用している場合と、近所に迷惑をかけていたり、契約に違反するような使用方法をしている場合では、後者の方が信頼関係破壊が認定され、解除が認められやすいといえます。
自己破産・個人再生をしたことは非常にマイナスに考えられる可能性があり、3ヵ月以上滞納している場合には賃貸借契約が解約されてしまう可能性が高いといえるので注意しましょう。
そのため、借金返済が難しいどころか、賃料の支払いすら難しくなっている場合には、早めに債務整理にとりかかるのが良いといえます。
破産管財人が賃貸借契約を解除することがある
自己破産手続きの際に、破産管財人が賃貸借契約を解除することがあり、これによって自宅を追い出される可能性があります。
破産法53条は、履行の終わっていない双務契約について、破産管財人が解除できる旨が規定されています。
これは、自己破産手続きを行う人にとってもはや不要となっている契約・不利となっている契約について解約することを破産管財人に認めて、財産関係をクリアにすることが趣旨の条文です。
たとえば、破産手続きを行う人が、自分の収入に比してあまりにも高額の賃貸物件に住んでいる場合、その契約の存続を認めても、家計が破綻し続けることになるでしょう。
例えば、一人暮らしの人が手取りの月収が20万円しかないにも関わらず、毎月の賃料が15万円するところに住んでいるような場合、生活費に5万しか使えず、この状態を続けることは債務者の財産関係を清算する意味でも好ましくないといえるのは明白です。
賃貸借契約も賃料の支払いと物件を使用収益させるという双務契約に属します。
そのため、破産管財人はこの契約を解除することができます。
この場合、賃貸物件の解約がされるので、自宅を退去しなければなりません。
どのくらいから収入に比してあまりにも高額かは、個々の収入と家族構成、家計の状況によって異なるので、判断が難しい場合には早めに弁護士・司法書士に相談しましょう。
保証委託契約の更新を拒否される可能性はある
現在の住居に住み続けられた場合でも、賃貸借契約の更新時に、保証会社がブラックリストであることを理由に保証を拒否されることがあります。
その結果、賃貸借契約自体の更新もすることができず、契約の更新が拒否される可能性が高いでしょう。
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債務整理後も同じ物件に住み続けるための対策3つ
債務整理後も同じ物件に住み続けたい場合の対策としては、次の3つの対策が考えられます。
賃料の延滞はしない
まず、賃料の延滞はしないようにしましょう。
賃料の延滞をした場合、任意整理であれば手続きを初めてから遅れた支払いを取り戻すことが可能ですが、自己破産・個人再生をする場合には手続きに着手した後は延滞分について手続きが終了するまでに支払ってはいけません。
これは、自己破産・個人再生では、すべての債権者を平等に取り扱うためで、一部の債権者にのみ特別に支払うと手続きに大きな支障をきたします(偏頗弁済:ぺんぱべんさい)。
そして、上述したとおり、法律の規定に従って、自己破産の場合には免責・個人再生の場合には減額することになるので、賃料滞納の額によって賃貸借契約の解除が認められることになります。
滞納している賃料の額が僅かである場合には、上述した信頼関係破壊に至っていないとして、賃貸借契約が解除されずに済む場合もありますが、2~3ヵ月程度の延滞があると解除が認められやすくなります。
そのため、債務整理を行うことを検討しているのであれば、絶対に賃料の延滞は避けるべきだといえます。
賃貸借契約の更新を迎える前に大家・不動産会社に相談
賃貸借契約の更新を迎える前に、大家・不動産会社に相談しましょう。
賃料の延滞などがない場合、基本的にはそのまま住み続けることができますが、この場合でも更新のときにブラックリストを原因に更新を拒絶される場合があります。
この場合、特別に信用情報を利用しない他の保証会社に保証人を替えてもらうか、連帯保証人を立てることを大家に認めてもらって、契約の更新をしてもらうことになります。
家賃保証会社が更新を拒否してから、大家もしくは仲介をしている不動産管理会社に相談するのは心証が悪く、特別な保証人の振替に応じてもらえず、契約更新をしてもらえない可能性が高まります。
大家・不動産管理会社に事前に丁寧に説明しておけば、余裕をもって手続きを行うことができるため、大家・不動産管理会社に理解してもらいやすいと言えるでしょう。
債務整理前にクレジットカード払いから他の手段に変更
債務整理前にクレジットカード払いから他の手段に変更しておくのを忘れないようにしましょう。
家賃の支払い方法として、クレジットカード払いとしていることがあります。
これは、賃借人としても特別振り込んだり、引き落とし口座にお金を用意しておく必要がないですし、賃貸人としても管理の手間が省けるためです。
しかし、債務整理をすると、クレジットカードの利用ができなくなります。
債務整理の対象となったクレジットカードについてはすぐに使えなくなり、任意整理でクレジットカードだけは外して債務整理をした場合でも、そのクレジットカードの更新の際にブラックリストであることで使えなくなります。
そのままクレジットカード払いとしていると、処理ができず延滞です。
自己破産手続き・個人再生手続きを初めて、その後にクレジットカード払いが引き落とせず延滞してしまった場合、その支払いができない場合もあります。
1ヵ月程度の延滞であればすぐに賃貸借契約の解除とはいかなくても、契約の更新のときに上述したような連帯保証人を立てての契約に応じてもらえないという結果も招きかねません。
そのため、債務整理をする際には必ず家賃の支払い方法を確認し、クレジットカード払いになっている場合には支払い方法を口座振替や振込に変更しておくのが良いでしょう。
債務整理後に新しく賃貸を探す時のポイント5つ
債務整理語に新しく賃貸物件を探すポイントとして次の5つの方法をご紹介します。
クレジットカード以外で支払いが可能か
クレジットカード以外での支払いが可能かどうか調査してから契約するようにしましょう。
不動産管理会社によってはクレジットカードでしか支払いができないとする場合があります。
これは、ブラックリストになっているか自社では信用情報で確認できないけども、クレジットカードを持っていればブラックリストではない、という判断ができるためです。
振込・口座引落、クレジットカード以外にもデビットカードやプリペイドカードの利用は可能か、最寄りの不動産管理会社に手渡しで支払いが可能か、などを確認しましょう。
信用情報を確認しない賃貸保証会社の物件か
信用情報を確認しない賃貸保証会社の物件を選びましょう。
公営住宅・UR賃貸は保証人不要で入居可能
公営住宅・UR賃貸を利用すれば、保証人は不要で入居が可能です。
公営住宅とは地方自治体が住民のために提供している住宅で、UR賃貸とは独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が管理しているものです。
これらはいずれも住宅の確保が難しい人のために安い賃料で借りやすいように準備しているもので、保証人は不要です。
また、礼金・仲介手数料や更新をする場合の更新料が不要となっている点もメリットです。
審査も一般の賃貸物件に比べると緩やかなので、賃貸しやすいのが特徴です。
一般的には特定の時期に抽選が行われ、当選した時に入居できる仕組みとなっていますが、空きがある場合には随時申し込みが可能です。
これらの中には築年数が古い物件も多いのですが、内部は居住しやすいようにリノベされているのが通常です。
もともとの構造が古いため、天井が低い・入り口が狭い、などの可能性はありますが、内装は比較的新しいものが利用可能なので、積極的に検討してみましょう。
地元の不動産業者に相談すれば柔軟な取り扱いも
賃貸をする際に、地域の不動産業者に相談すれば、柔軟な取り扱いをしてくれる可能性が高いです。
不動産管理会社にも、大手の会社の支店・地元を中心に営業をしている不動産業者など様々な種類があります。
大手の会社のほうが、信用情報に基づく賃貸保証の審査をする保証会社を利用していることが多く、さらに連帯保証人での審査を行わないなどの硬直的な運用をしていることが多いです。
一方で地元を中心に営業している不動産管理会社であれば、大家との人的関係が強い場合も多く、柔軟な対応をしてくれる可能性も高まります。
そのため、地元の不動産業者に相談してみることも検討しましょう。
依頼した弁護士・司法書士事務所に相談
債務整理を依頼した弁護士・司法書士事務所に相談することも検討しましょう。
賃料を滞納している場合でも契約を解除しないように大家・不動産会社と交渉してくれたり、不動産の立ち退きについて無理のないようなスケジュールになるように調整をしてくれたりします。
また、債務整理に強い弁護士・司法書士であれば、債務整理にまつわり発生する様々な事象にも取り組めるように、外部の専門家と繋がっていることが多いです。
債務整理によって住宅の確保に支障をきたす人がいる場合に、賃貸しやすい物件を紹介できる不動産会社に連絡を取ってくれる可能性があります。
まとめ
本記事では、債務整理しても賃貸契約・更新はできるのか、今の住宅に住み続けるための方法などについてお伝えしました。
債務整理によってブラックリストとなることから、賃貸契約や更新に影響がある可能性があります。
賃貸契約をする場合に保証会社が信用情報を用いて審査することがあり、その場合にブラックリストとなっていることが確認されるため、賃貸契約や更新ができなくなるケースがあります。
この場合でも、連帯保証人をたてるなどの方法で借り続けることができる場合もあります。
現在の賃貸契約が原則として解除されることが無いことと併せて、確認しておきましょう。
経験豊富な弁護士をはじめとした債務整理専門チームが丁寧に対応!
そこで本記事では、債務整理しても賃貸契約や更新はできるのか、今いる住居に住み続けられるのかなど、債務整理と賃貸契約についてお伝えします。