「借金の利息が膨らみ負債総額は数百万円になってしまった。」「多重債務でとても返済の目途がたたない。」と、借金問題に頭を悩ませている債務者は多いことでしょう。
このようなときに検討するのが「債務整理」です。
債務整理とはそもそもどのような制度なのでしょうか。
本記事では債務整理とはどのようなものなのか、2025年12月現在の最新情報をお伝えします。
- 毎月の借金の返済が大変
- ずっと返済しているがなかなか減らない
- 借金の返済を滞納してしまっている
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債務整理とは?簡単に解説
債務整理とは、借金の返済が困難になったとき、債権者(お金を貸した側)との交渉または裁判所へ申し立てて、返済中の借金の免除・減額や、返済期限の延長をしてもらう借金救済制度です。
債務整理は主に任意整理・個人再生・自己破産という方法が用意されています。
これらの中からその債務者(お金を借り側)の状況に合わせた方法を用いて、借金問題を解決します。
債務整理の手続きは債務者本人だけでも進められるものの、弁護士や司法書士のような法律の専門家にサポートしてもらうのが一般的です。
「借金救済制度」は「債務整理」と同じ意味
債務整理について調べていると、SNS広告などで「借金救済制度」というものを見かけるときがあるでしょう。
借金救済制度の中身をよく見てみると、任意整理や個人再生・自己破産について説明されており、債務整理の内容と変わりません。
債務整理という名称は任意整理・個人再生・自己破産の総称であり、借金救済制度と全く同じ意味です。
インターネット広告やサイト中には、注目をひくため「2025年最新の借金救済制度」と表示されているケースがあるものの、中身は債務整理の説明です。
特に借金救済の新システムの紹介というわけではないので注意しましょう。
債務整理の3種類と特徴
債務整理は主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の方法が用意されています。
下表の通り、それぞれに特徴があります。
| 債務整理 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
| 特徴 | 利息カット、返済期限の延長 | 借金の大幅な減額、返済期限の延長 | 借金の免除 |
| 裁判所の関与 | なし | あり | あり |
| 整理対象 | 選択可能 | 住宅ローン除く全債務 | 全債務 |
| 財産没収 | なし | ローン返済中の家や車が引き上げられる可能性あり | 基本的に財産没収 |
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて説明していきましょう。
任意整理|返済軽減したい人
引用元:はたの法務事務所
任意整理とは、債権者と交渉して借金の減額や返済期限の延長を図る債務整理法です。
任意整理の手続きは法律に明記されておらず、債務者が個別に交渉したい債権者へ任意整理をもちかけ相手方が応じれば、当事者間で話し合いが進められます。
個人再生・自己破産はそれぞれ法律に則り借金問題の包括的な解決を図る手続きですが、任意整理は法律の規定もなく個別に債権者と交渉できる点が大きな特徴です。
任意整理のメリット
- 交渉次第で利息のカットや返済期限の延長(概ね3~5年)が可能
- 債権者を選んで交渉が可能
任意整理のデメリット
- 元金の減額は非常に困難
- 交渉不成立となる場合がある
債務整理を行うとローンを組んで購入した物(例:自動車等)は、債権者から引き上げられてしまう可能性があります。
しかし、任意整理ならば債権者を選択できるので当該ローン会社を外し、他の債権者(消費者金融等)に交渉を申込んでも構いません。
一方、任意整理を行えば交渉次第で利息のカットは可能であるものの、元金自体のカットは非常に困難です。
無理に元金のカットを主張したり、5年を超える返済期限を主張したりすると、債権者との交渉が決裂する場合もあるので注意しましょう。
個人再生|家を残したい人
引用元:はたの法務事務所
個人再生とは、裁判所に申立て借金の大幅な減額や返済期限の延長を図る債務整理法です。
個人再生は民事再生法に則り、裁判所で手続きを進めていきます。
個人再生手続は次2種類に分かれます。
| 自己破産の種類 | 内容 |
| 小規模個人再生 | 主に自営業者等が対象となる個人再生。
裁判所に申立てるとき、次の条件に該当する必要がある。 ・借金の総額(住宅ローン除く)が5,000万円以下 ・将来にわたり継続的な収入の見込みがある |
| 給与所得者等再生 | 主にサラリーマンが対象となる個人再生。
裁判所に申立てるとき、次の条件に該当する必要がある。 ・借金の総額(住宅ローン除く)が5,000万円以下 ・将来にわたり継続的な収入の見込みがある ・収入は給料等でその金額が安定している |
こちらでは、どこまで減額が可能なのかをみてみましょう。
(1)負債総額に応じた返済金額
- 100万円未満:総額全部
- 100万~500万円以下:100万円
- 500万円超~1,500万円以下:総額の1/5
- 1,500万円超~3,000万円以下:300万円
- 3,000万円超~5,000万円以下:総額の1/10
ただし、小規模個人再生を選んだ場合(2)債務者の財産全部を処分したとき得られる金額の方が高ければ、その金額分を返済しなければいけません。
一方、給与所得者等再生の場合は(1)(2)の他に、(3)債務者の収入の合計額から税金・最低生活費等を差し引いた金額(可処分所得額)の2年分の金額も比較し、最も高い金額以上の返済をする必要があります。
個人再生のメリット
- 負債総額を最大1/10まで減額でき、返済期限の延長(原則3年)が可能
- 債務者の職業・資格への影響はない
- 住宅ローン特則を付せばローン返済中の家に住み続けられる
個人再生のデメリット
- ローン返済中の車は引き上げられる可能性がある
- 手続きが厳格、裁判費用がかかる
- 現実的な再生計画でなければ、不認可となる可能性がある
個人再生は借金総額を最大で1/10まで減額でき、原則3年(裁判所が認めれば5年)まで返済期限を延長できるのがメリットです。
個人再生の対象となるのは自営業者や給与所得者であり、手続きを進めても何ら職業・資格に影響はありません。
また、裁判所に申立てるとき住宅ローン返済中の家を所有していれば、住宅ローン特則が利用できます。
個人再生計画案に住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を明記しましょう。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは、個人再生を行うことで債権者から住宅ローン返済中の家を没収されないための措置です。
この措置を講じていれば、住宅ローン返済中の家に住み続けられます。
自己破産における職業・資格制限や、住宅ローンで購入した家が没収される事態を避けられるのも個人再生の強みです。
ただし、個人再生は裁判所に申立て手続きを進めるので、手続きが厳格で裁判費用もかかってしまいます。
ローン返済中の自動車があれば、ローン会社から自動車が引き上げられてしまう可能性もあります。
なお、現実的な再生計画を立てなければ、裁判所から個人再生を認めてもらえない場合があるので要注意です。
自己破産|返済が全くできない人
引用元:はたの法務事務所
自己破産は裁判所に申立て、債務者の借金全額を免除してもらう債務整理法です。更に、自己破産は次の3種類に分けられます。
| 自己破産の種類 | 内容 |
| 管財事件(通常管財) | 債務者に、破産手続費用を支出できる財産があると認められたときの手続き。
債務者は予納金等を負担し、破産管財人が裁判所から選任される。 |
| 少額管財事件 | 弁護士が債務者の代理人となった場合の手続き。
予納金は低額に抑えられ、弁護士・破産管財人が協働して手続きを行う。 |
| 同時廃止事件 | 債務者に破産手続費用を賄う資力の無いと判断された場合、
破産手続開始決定と同時に裁判所の決定がなされる。 破産管財人は選任されない。 |
借金が多額となり返済不能に陥っている債務者を対象として、破産法に則り裁判所で手続きが行われます。
自己破産のメリット
- 借金の返済が免除される
自己破産のデメリット
- 手続きが厳格、裁判費用がかかる
- 債務者(破産者)名義の財産は基本的に没収
- 交渉不成立となる場合がある
自己破産は、基本的に借りたお金の返済を全額免除されるのが最大のメリットです。
自己破産が認められれば、残債の返済義務がなくなります。
ただし、破産法に基づき裁判所へ申立てる必要があるので、手続きは複雑で裁判費用もかかります。
管財事件(通常管財)として手続きを進めるときは、50万円程度の予納金を支払わなければいけません。
債務者(破産者)名義の財産は「自由財産」(例:99万円以下の現金、差押禁止財産等)を除き、基本的に没収されてしまいます。
また、自己破産をすれば特定の職業に一定期間就けません。
例えば弁護士・税理士・司法書士・行政書士等の士業資格の一部や、貸金業・警備員等が制限の対象となります。
その他、破産手続中に居住地を離れるときは原則として裁判所の許可が必要です。
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債務整理のメリット
債務整理を行えば、借金の負担が軽減され生活再建を図りやすくなります。
ここでは債務整理のメリット4つについて説明しましょう。
利息や将来分の金利がカットされる
任意整理の交渉に成功すれば、利息や将来に上乗せされる金利もカットできます。
返済期限内にコツコツと元金を返していけることでしょう。
個人再生では借金の総額が1/5~1/10まで軽減され、任意整理以上に負担が軽くなります。
自己破産が認められれば、債権者から借りたお金の返済は免除されます。
ただし、個人再生と自己破産は裁判所に申立てて、手続きを進めなければいけません。任意整理よりも手間と時間はかかってしまうことでしょう。
月々の返済額が大きく下がる
任意整理や個人再生が認められた場合、債務者の生活に支障をきたす、毎月の返済額からの軽減が可能です。
個人再生が認められたケースをみてみましょう。
(例)負債総額1,000万円の個人再生が認められた(支払回数36回)。
個人再生の最低弁済基準により、借入総額の1/5に軽減されるので、
負債総額1,000万円×1/5=200万円
200万円÷36回=55,556円
毎月約5万6,000円の支払いだけで済むことになります。
取り立て・督促がすぐに止まる
弁護士・司法書士に債務整理を依頼し、弁護士・司法書士が債権者に受任通知を発送すれば、取り立て・督促を停止できます。
債権者の取り立て・督促が停止されれば、債務者は精神的な負担も軽減することでしょう。
貸金業法21条1項9号では、弁護士・司法書士に債務整理を依頼した後に、本人に取立をすることを原則禁じています。
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
引用:貸金業法21条1項9号|e-Gov法令検索
ただし、取り立て・督促を止めたいからと、弁護士・司法書士に受任通知の発送のみを依頼するのは原則として認められません。あくまで受任通知の発送は、債務者からの債務整理の依頼が前提となります。
家計を立て直して生活を再スタートできる
債務整理は前向きな人生を送る助けとなります。
借金返済が債務者の重い負担となっている限りは、家計を立て直し、生活を再スタートさせるのは非常に困難です。
債務整理により借金返済の負担が軽くなる、または借金が免除されれば速やかに生活再建を実現できることでしょう。
借金問題をクリアしても二度と借金で悩まないように、家計簿をつけるなど、収支状況をきちんと把握する習慣も身に着けましょう。
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債務整理のデメリットと生活への影響
債務整理をすれば借金を免除や減額が可能であるものの、その一方でどうしても避けられない影響が発生する場合もあります。
債務者にどのような影響があるのかと、この影響を軽減する方法について確認しましょう。
一定期間ブラックリスト(信用情報)に登録される
債務整理を行うと、共通して問題になるのが「ブラックリスト」に載るという事態です。
貸金業者は債務整理が開始されると、その事実を加盟している信用情報機関(信用情報を管理・提供する機関)に報告します。
これを受け、信用情報機関では信用情報に債務整理したという情報(事故情報)を登録します。
このような状態を『ブラックリストに載る』と言い、以後の借入はほぼ不可能となるので注意しましょう。
ブラックリストに載ってしまうと、貸金業者から借金が非常に難しくなります。
貸金業者に借金を申し込んだとき、まず申込者の信用情報を参考に審査が行われます。
そのため、信用情報に事故情報が登録されていると、審査に通らない可能性が高くなってしまうのです。
ただし、事故情報が登録されても、全く借金(金銭消費貸借契約)が不可能になるわけではなく、親族や友人・会社からの借入は可能です。
また、ブラックリストに載る期間も永遠ではなく、任意整理・個人再生では完済してから5年程度、自己破産の場合は7年で解除されます。
| 手続き | ブラックリスト解除までの期間 |
|---|---|
| 任意整理・個人再生 | 5年 |
| 自己破産 | 7年程度 |
ブラックリストに載るのが嫌で債務整理はしたくないと感じる人も多いです。
しかし、債務整理をしないで頑張って返済しても、延滞が61日以上となれば、「異動情報」として登録され、結局ブラックリストに載ってしまいます。
返済ができなくなっている場合は、ある程度ブラックリストに載るリスクを覚悟しなければいけません。
クレジットカード・ローン・携帯端末などの信用取引が利用できなくなる
ブラックリストに載ると、クレジットカードの作成・更新ができなくなります。
クレジットカードを作成するときも、信用情報による審査が行われるため、作成の申し込みを行っても審査に通らない可能性が高いです。
任意整理を行う場合、利用中のカードを任意整理の対象に含めなければ、当面は使用できます。
しかし、クレジットカードの有効期限に近づき、更新するタイミングで信用情報に基づく審査が行われると利用はできなります。
自動車に乗る方は、高速道路(有料道路)を利用するときに便利なETCカードの作成・更新ができなくなるので注意しましょう。
なぜなら、ETCカードもクレジットカードと同じく、作成・更新時、信用情報に基づく審査が行われるからです。
ただし、ETCパーソナルカードなどのデポジット・事前入金のカードであれば利用できます。
その他、ローンの借入を申し出るときも金融機関の審査があるので、ブラックリストに載っていれば、やはり申し出を拒否されてしまいます。
携帯端末の契約時も、月額料金の支払いをクレジットカード決済にすることはできません。
一方、月額料金の支払いを銀行口座からの引き落とし(口座振替)やコンビニ払い等にすれば、契約できる可能性があります。
賃貸契約や更新の審査に影響する場合がある
賃貸契約・更新ができない場合もあります。
賃貸契約をするとき、信販会社などが保証会社となっているならば、家賃保証の審査で信用情報がチェックされます。
信用情報の審査でブラックリストに載っている事実が発覚すると、賃貸契約を拒否されてしまうことでしょう。
賃貸借契約の更新時も同じように審査が行われるので、家賃保証を拒否される可能性があります。
ただし、連帯保証人で審査ができる不動産会社を選んだり、連帯保証人が不要な公営住宅・UR賃貸を選んだりすれば賃貸契約は可能です。
財産が処分されるケースがある(自己破産のみ)
自己破産を行うと、債務者名義の財産が没収される事態に注意しましょう。
債務者名義の家や車、その他の動産は基本的に没収となります。
ただし、次の財産は「自由財産」と呼ばれ債務者は所有を継続できます。
- 99万円までの現金
- 残高が20万円以下の預貯金
- 見込み額が20万円以下の生命保険の解約返戻金
- 処分見込み価格20万円以下の自動車
- 家財道具
- 居住用家屋の敷金債権
- 電話加入権
- 支払見込額が160万円相当額の以下の退職金債権(160万円超:退職金債権の7/8)
- 差押えが禁止されている動産や債権
- 破産管財人が換価しないと決めた財産
自己破産以外でも債務整理時、購入した物が担保に入っていると、当該購入物を債権者から没収されるケースがあります。
契約上、支払い完済までは購入者に所有権が移らない場合(所有権留保)です。
もしも任意整理を行うのであれば、担保権を実行しそうな債権者は避けて交渉が可能です。
また、個人再生であれば住宅ローン特約を利用すると、ローン返済中の家の没収を回避できます。
資格職で一時的に仕事の制限がかかる場合がある
自己破産をするとき特定の職業に就いていた人は、その資格を利用した業務ができなくなる事態も想定されるので注意しましょう。
特定の職業については社会へ悪い影響を及ぼさないよう、資格・登録を必要とするケースがあります。
しかし、自己破産の手続期間中および自己破産後、一定期間にわたり特定の職業・資格を喪失してしまう可能性があります。
職業・資格が制限を受けるのは次の職業の人です。
- 警備員
- 士業専門資格(弁護士、税理士、司法書士、行政書士等)
- 宅地建物取引士
- 証券会社等の外務員
- 保険外交員
これらの職業・資格は、免責許可決定の確定で概ね復権が可能です。
ただし、職業・資格を喪失すれば収入が途絶えてしまうという問題に直面するおそれもあるでしょう。
子供の奨学金など、連帯保証人にはなれない
債務整理をした本人は連帯保証人になれません。
信用情報の審査は自分が借入をする場合のみならず、連帯保証人となる場合でも審査が行われます。
家族が連帯保証人を必要とするケースとして、例えば子供の日本学生支援機構の奨学金借入等があげられます。
他に、家族の誰かが住宅ローンや商工ローン・街金とよばれる中小の貸金業者から借入するときも、連帯保証人は必要です。
債務整理をした本人はブラックリストに載っており、連帯保証人の審査にはまず通らないので、家族にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
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債務整理する前に知っておきたい注意点
借金問題解決のため債務整理を急ぎたい債務者は多いことでしょう。
しかし、債務整理前に把握しなければいけないリスクもあります。
官報に公告される
債務整理の中で、自己破産・個人再生については官報で公告が行われる点に注意しましょう。
官報とは国が発行している機関紙であり、法律の制定や会社の決算公告のように、法令で公表が義務付けられている場合に用いられます。
自己破産・個人再生についても、他に債権者(借金の関係者)がいないかを探すため、官報による公告が行われます。
公告で表示される事項は、氏名・住所・自己破産または個人再生の手続きを行っている旨です。
官報はインターネットの掲載や、政府刊行物を取り扱っている書店などで購入で内容の確認が可能です。
ただし、一般人が官報を閲覧して、自己破産・個人再生を行っている事実が発覚するようなケースはほとんどありません。
もっとも、破産者の情報をWeb公開で公開する「新・破産者マップ」のように、官報情報を悪用する者もいるので注意が必要です。
保証人に迷惑をかける
債務整理をすれば、保証人に迷惑をかける可能性があります。
債務に保証人(連帯保証人)を付していた場合、その債務に債務整理を行えば、債権者は保証人(連帯保証人)に返済請求をします。
これは任意整理・個人再生・自己破産どの債務整理手続きでも同様です。
保証人は債権者から一括請求を受けて困惑してしまうことでしょう。
典型的な例としては借入に奨学金がある場合、連帯保証人となっている親に債権者が請求し、親子関係の悪化の原因になるかもしれません。
自己破産や個人再生では、すべての債権者を対象に債務整理する必要があり、保証人に迷惑をかけるおそれがあります。
しかし、任意整理であれば債権者を選べるので、連帯保証人を付した債務は避けて、交渉が進められます。
家族や会社に借金がバレる可能性がある
家族や会社に借金をしていた事実が発覚する可能性もあります。
債務整理の手続きを行っているときには、次のような事態に要注意です。
- 弁護士が依頼者の自宅へ送った郵送物を家族が勝手に開封する
- 債権者に訴訟を起こされ、自宅に特別送達郵便が送られて確認される
- 自己破産で共働きの配偶者の給与明細を要求され、やむなく協力を要請する
- 裁判によって債務者の給与が差し押さえられる
債務整理に慣れている弁護士・司法書士であれば、郵送物のやりとりに気をつかってくれますし、債権者が訴訟を起こさないように粘り強く交渉することでしょう。
もし利息カットや返済期限の延長で借金を返していける状態なら、債権者に任意整理の交渉を持ちかければ、訴訟に発展するリスクを軽減できます。
債務整理にかかる費用の相場と安くする方法
債務整理は借金問題の解決につながる方法であるものの、裁判所に申立てたり、弁護士・司法書士に依頼したりするとき費用がかかります。
大まかな費用は下表の通りです。
| 手続き | 費用 |
|---|---|
| 任意整理 | 1社あたり5万円~ |
| 自己破産 | 30~50万円 |
| 個人再生 | 35~60万円 |
かかる費用について手続きごとに検討しましょう。
任意整理の費用
任意整理は債権者と直接交渉をする手続なので、裁判費用はかかりません。
しかし、弁護士または司法書士に代理人を依頼すると、交渉する債権者の数に応じて費用がかかります。
任意整理にかかる弁護士・司法書士費用の目安は下表の通りです。
| 内容 | 費用(目安) |
|---|---|
| 着手金 | 2万円~5万円 |
| 解決報酬金 | 0円~2万円 |
| 減額報酬 | 0円~減額した10% |
例えば50万円の借金額を40万円に減額できた場合、概ね次のような費用がかかります。
| 内容 | 費用(目安) |
|---|---|
| 着手金 | 4万円 |
| 解決報酬金 | 2万円 |
| 減額報酬 | 1万円(10万円×10%) |
| 合計 | 7万円 |
任意整理については債権者と交渉するだけなので、手続き自体にかかる費用は比較的安いです(例:弁護士の郵送・電話代など)。
個人再生の費用
個人再生では裁判費用と弁護士・司法書士費用がかかります。
弁護士・司法書士費用は次の通りです。
| 内容 | 費用(目安) |
|---|---|
| 着手金 | 30万円~ |
| 成功報酬 | 30万円~ |
| 住宅資金特別条項がつく場合 | 5万円~10万円加算 |
個人再生については、着手金・成功報酬を分けないで報酬を請求する事務所も多く、ホームページ等でかかる費用がいくらなのか目安を確認してみましょう。
個人再生手続き自体にかかる費用は次の通りです。
| 内容 | 費用(目安) |
|---|---|
| 申立手数料 | 10,000円 |
| 予納郵券 | 2,000円~4,000円(裁判所による) |
| 予納金 | 約15,000円(裁判所による) |
| 個人再生委員の報酬 | 15万円~25万円(裁判所による) |
申立手数料は、収入印紙を購入して申立書に貼って納付します。
予納郵券は裁判所が郵送に使うために切手を購入して納付するもので、裁判所によって金額は異なります(余った場合には返還されます)。
個人再生は官報に公告する必要があり、そのために費用として予納金を負担しなければいけません。
個人再生では個人再生委員が選任される場合が多く、その場合の個人再生委員の報酬として、裁判所によって15万円~25万円が必要です。
自己破産の費用
自己破産も裁判費用と弁護士・司法書士費用が必要です。
かかる費用(目安)は次の通りです。
| 内容 | 費用(目安) |
|---|---|
| 着手金 | 25万円~ |
| 成功報酬 | 25万円~ |
| 管財手続の場合 | 5万円~15万円加算 |
自己破産も個人再生と同様に、着手金・成功報酬を分けないで報酬を請求される場合があります。
管財事件(通常管財)・少額管財事件となれば、破産管財人への報酬が別途必要となるので、費用が加算される場合もあります。
自己破産手続き自体にかかる費用は次の通りです。
| 内容 | 費用 |
|---|---|
| 申立手数料 | 1,500円 |
| 予納郵券 | 3,000円~6,000円(裁判所による) |
| 予納金 | 15,000円程度(裁判所による) |
| 破産管財人の報酬 | 20~50万円以上 |
自己破産の場合も個人再生と同様に、申立手数料は収入印紙を申立書に貼って納めます。
予納郵券についても同様に、裁判所が指定する額の切手を購入して納めます。
自己破産手続きでが官報で公告されるので、予納金の納付は必要です。
自己破産で管財事件となる場合、破産管財人の報酬を支払わなければいけません。
少額管財の場合は20万円~、通常管財の場合には50万円~が必要となります。
費用を安く抑える方法
債務整理の費用を安く抑えるには、まず無料相談が可能な弁護士・司法書士の事務所をみつけましょう。
弁護士・司法書士に相談をする場合、通常30分5,000円~の相談料がかかります。
事務所の中には債務整理の相談は初回無料、何回でも無料というところもあります。
無料相談サービスを行う事務所であれば、無料で気軽に債務整理の有益なアドバイスを得られることでしょう。
そのため、債務整理・借金問題に取り組んでいる弁護士・司法書士は、無料で相談できるようになっています。
また、弁護士・司法書士費用自体は減額できないものの、報酬を一括ではなく後払い・分割払いに応じる事務所もあります。
後払い・分割払いが可能ならば、金銭的な負担を抑えつつコツコツ報酬支払いが可能です。
債務整理の流れと必要な期間
それぞれの債務整理の流れや、手続きが終わるまでの期間の目安について確認しましょう。
任意整理の流れ
弁護士や司法書士に依頼後、任意整理は大まかに次のような流れで進みます。
- 債務の調査
- 債権者と交渉し和解する
- 返済
まず債権者(消費者金融・金融機関)に取引履歴を開示後、開示された取引履歴をもとに債務額を調査します。
取引履歴の開示には1ヵ月程度かかることでしょう。
債務額を確定した後、返済計画を債権者に提出し交渉開始です。
取引履歴の開示から交渉が終了するまで、順調にいけば3ヵ月程度、交渉で調整が必要となった場合、6ヵ月程度の期間がかかります。
貸金業者と和解した後は取り決めた返済期限(3~5年)までに、分割返済で支払いの完了を目指します。
個人再生の流れ
個人再生は次のような流れで行われます。
- 債務の調査
- 個人再生の申立準備
- 裁判所に申立て
- 再生計画案の作成・個人再生委員との面談
- 再生計画案の認可を受け返済開始
個人再生も債務の調査をまず行い、これには1ヵ月程度かかることでしょう。
債務の調査が終わると申立書を作成したり、添付書類を収集したりなど申立てに向けた準備を行います。
この準備には順調でも2ヵ月程度かかります。
個人再生の申立てが行われ、再生計画案の提出・個人再生委員との面談が行われ、これらをもとに再生計画が認可されると、いよいよ返済の開始です。
ここまでさらに3ヵ月程度かかるのが通常です。
債務調査や準備、個人再生の申立てから認可までは半年~1年程度とみて良いでしょう。
返済期限は3年が原則で、例外的に5年とすることも可能です。
なお、東京地方裁判所に申立てをする場合は履行テストが実施され、テスト用の口座へ毎月期日までに指定金額を振り込む作業が必要となるときもあります。
自己破産の流れ
自己破産は次のような流れで行われます。
- 債務の調査
- 自己破産の申立準備
- 裁判所に申立て
- 破産管財人・裁判所との面談
- 免責される
自己破産でも他の手続きと同様に債務調査が行われ、これには1ヵ月程度の期間がかかります。
自己破産も個人再生と同様に申立て書類を作成し、添付書類を集める必要があり、こちらもスムーズに行えても2ヵ月程度を要することでしょう。
申立後に同時廃止の場合は裁判所との面談を1回、管財事件の場合には破産管財人との面談を1回以上、裁判所での債権者集会を1回以上開き、手続きが進められていきます。
同時廃止の場合で3〜4ヶ月程度、通常管財・少額管財は半年程度の期間がかかります。
債務整理を相談したほうがいい人の特徴
債務整理の無料相談を受けた方がいい人には次のような特徴があります。
- 毎月しっかり返済しても借金が一向に減らない
- 借金返済のための借金を繰り返している(多重債務)
- 収入の減少や無収入により返済困難
このような方々は速やかに準備を整え、弁護士・司法書士に相談してみましょう。
相談すべきライン
債務整理はまず弁護士・司法書士に相談するところから始まります。
相談するため、事前に事務所へ連絡して予約をとり、指定された日時に対面相談やオンライン相談をします。
弁護士・司法書士との相談は、担当者の都合がよければ即日~1週間程度で可能です。
ただし、事前に次のような書類等を準備しておきましょう。
- 借金に関する情報が記載された書類:金銭消費貸借契約書、レシート等が該当。借入額・利率を表のような形でまとめれば、スムーズに相談が可能。
- 身分証明書:運転免許証・マイナンバーカードのような本人確認書類。社員証でも良い場合がある。
- 印鑑:実印の他に認印でも可。シャチハタ印は不可とされる可能性が高い。
なお、借金に関する情報が記載された書類をあまり集められなくとも問題はありません。
その後、事務所側が借入先・借入金額を詳しく調査し、正確な借金総額を算定します。
まだ債務整理が必要でないケース
多重債務や借金総額が多額の場合でも、債務者に次のような状況の変化があれば、そのまま債権者への返済を継続した方が良いでしょう。
- 無職だったものの就職を果たし、安定した収入を得られるようになった
- 勤務先から近々まとまったボーナスを得られる
- 家族や親戚、知人が借金の肩代わりを約束した
- 自己所有の家屋や車を売れば、まとまった借金を返せそうだ
- 時効援用や過払い金請求ができる
時効援用とは、債務者から債権者に「借金が消滅時効を迎えたので、返済しない。」と伝える方法です。
時効の援用が認められた場合、債権者から借りたお金の返済は不要となります。
この方法は借金があったものの、債権者から5年以上にわたり支払いを一切請求されず、自分から返済もしていなかった場合に可能です。
債権者に内容証明で時効援用の意思表示をすれば、基本的に借金を消滅させられます。
過払い金請求とは、利息制限法の上限金利で算定される金利額を超え、債権者へ余分に支払ったお金(過払い金)を返してもらう方法です。
完済後に債権者へ返還請求する場合、ブラックリストに載ることはありません。
時効援用や過払い金請求が可能か否かは、勝手に債務者だけで判断せず、弁護士や司法書士に確認してもらった方が良いでしょう。
経験豊富な弁護士をはじめとした債務整理専門チームが丁寧に対応!
無料相談できる窓口と選び方
借金を完済したくとも返済したお金は利息に消えてしまい元金が減らない、生活に精一杯で滞納が続いているという場合は、速やかに弁護士や司法書士へ相談してみましょう。
無料相談が受けられる窓口や、無料相談を利用した弁護士・司法書士の選び方について説明します。
弁護士・司法書士の選び方
債務整理の相談は弁護士・司法書士いずれにも行えます。
弁護士・司法書士の事務所の中には、無料相談サービスを行うところも多く、負担なく気軽に相談が可能です。
債務者本人が次のような希望を持っているなら、次の事務所に相談してみましょう。
- 借金が多額にのぼり任意整理の他、自己破産・個人再生の相談・依頼を行いたい→法律(弁護士)事務所
- 債権者1社の借金額はそれぞれ140万円以内のようだ、なるべく任意整理で和解を図りたい→司法書士事務所
相談からスムーズに依頼をしたい場合、弁護士であれば全ての債務整理の代理人となれます。
一方、「利息カットや返済期限を延長が認められるなら完済できそうなので、任意整理を任せたい。」というときは、司法書士に委任しても構いません。
司法書士には、債権者1社の借金額が140万円を超える案件は代理できず、自己破産・個人再生は書類作成のみが可能です。
ただし、債務の額がそこまで多くないような場合や、自己破産・個人再生の書類の作成だけを依頼したい場合は、司法書士への相談も検討しましょう。
無料相談で確認すべきポイント
無料相談サービスを利用するときは、担当する弁護士・司法書士の次の部分を確認しましょう。
- 債務整理に実績豊富な弁護士・司法書士か?
- 態度が横柄ではなく、相談者の質問をしっかりとヒアリングしているか?
- 素人にもわかる丁寧なアドバイスを心がけているか?
- かかる費用をはぐらかさずに詳しく説明しているか?
4つのポイントを満たしているなら、債務整理を安心して任せられる弁護士・司法書士といえます。
ただし、無料相談を担当するのが事務員の場合もあります。弁護士・司法書士に直接話を聞いてもらいたいなら、弁護士・司法書士が相談に対応するのか前もって電話等で確認しておきましょう。
法テラスを利用できるケース
経済的に困窮している債務者であれば、法テラスの利用を検討しましょう。
法テラスとは「日本司法支援センター」の愛称です。
法テラスでは収入が少ない方々を対象に、弁護士や司法書士による法的なサービスを受けられるよう、無料相談や弁護士費用の立て替えを行っています(民事法律扶助制度)。
世帯ごとの収入・保有資産が一定の基準以下であれば、民事法律扶助制度が利用が可能です。
収入要件は世帯の人数や居住地によって異なるので、法テラス公式サイト「無料法律相談・弁護士等費用の立替」を参考にしてみてください。
よくある質問
ここでは債務整理に関するよくある質問へ回答していきます。
債務整理で車はどうなる?
債務整理をする場合、支払いが完了している車なら自己破産以外で没収されることはありません。
自己破産を行うと、基本的に債務者(破産者)名義の車は没収されてしまいます。
車の中古車価格が20万円以下に収まるなら、自由財産と認められ没収はされません。
一方、任意整理・自己破産を行う場合でも、分割やクレジットで購入し返済中の車であれば、引き上げられる可能性があります。
例えば車のローン完済までの間、車の所有権をローン会社に残しておく契約の場合です(所有権留保)。
ただし任意整理の場合、車を引き上げそうな相手は除外し、個別に債権者と交渉が可能です。
債務整理でマイホームはどうなるか
自己破産の場合、基本的に債務者(破産者)名義の家は没収されてしまいます。
個人再生を行う場合も、住宅ローンが残っている家であれば、没収のリスクはあります。
ただし住宅ローン特則を利用すると、これまで通り住宅ローンの返済を続ければ家が残せて、他の負債の大幅な減額が可能です。
債務整理の費用が払えない人はどうする?
ほとんどの場合、弁護士・司法書士の事務所は分割払い・後払いに応じるなど、債務者に配慮した措置をとります。
例えば自己破産をする場合、次のような費用がかかる可能性があります。
| 内容 | 相場 |
|---|---|
| 弁護士費用 | 約40万円~ |
| 手続費用 | 約25万円~ |
借金返済に困っている状態の中、これらの返済を一括でできる債務者はほとんどいません。
そのため事務所側は債務者に無理な支払いとならないように、債務者と相談のうえで分割払い・後払いに応じるケースが多いです。
一方、手続費用は裁判所へ申立てをする時点までに用意します。
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば債権者への返済は停止できるので、その分を弁護士・司法書士費用の支払いや、手続費用の準備に振り向けられます。
そのためすぐお金が用意できる状況になくても、債務整理の依頼は可能です。
債務整理がバレて強制解雇はある?
債務整理をしている事実が会社に発覚し、強制解雇となるケースはまずありません。
解雇となるのは、会社の秩序を乱した場合に行われる(懲戒解雇)、会社の人員整理のために行われる(整理解雇)、その他の解雇(普通解雇)と種類があります。
いずれの解雇についても法律上の要件を満たす必要があります。
しかし、債務整理は解雇の要件に該当せず、会社側は強制的に解雇することはできません。
おすすめの弁護士事務所は?
債務整理の実績豊かな事務所ならば安心して相談や依頼ができます。
実績に関しては事務所のホームぺージやサイトで、具体的な実績数が掲示されている場合もあります。
まずはそれを参考に事務所を選び、実際に相談をしてみて、自分に合うと感じたら委任契約を締結しても構いません。
債務整理に強いおすすめ弁護士事務所については「債務整理おすすめ」の記事でご紹介しています。
弁護士と司法書士どちらがいい?
債務整理に関しては、弁護士・司法書士どちらにでも相談が可能です。
ただし、債務整理の全てを任せられるのは「弁護士」のみです。
そのため、現時点では任意整理を考えているものの、交渉が不調なら個人再生や自己破産に移りたいならば、最初から弁護士へ依頼した方が手続きをスムーズに進められます。
一方、借金がそう多くはなく任意整理で債権者との和解に持ち込みたいならば、司法書士に依頼しても構いません。
まとめ
債務整理は、借金の返済が難しいとき生活を立て直すために国が認めた法的救済制度です。
債務整理には種類があり、それぞれ特徴やデメリットがあり手続きの流れも異なります。
そのため、債務者本人だけで債務整理を進めるのは非常に困難な作業と言えるでしょう。
しかし、弁護士や司法書士に相談すれば、債務者の状況に適した債務整理法のアドバイスが得られます。
相談後に委任契約を締結すれば、債権者への返済額の減額・支払い方法の見直し交渉、債務整理の手続きも任せられます。
また、多くの事務所が無料相談や分割払い・後払いに対応しているので、弁護士・司法書士費用の負担を抑えながら借金問題の解決が可能です。
一人で悩まず、早期に専門家への相談をおすすめします。







また、債務整理の種類と、種類ごとにどのような特徴やデメリットがあるのでしょうか。気になりますよね。