借金返済ができなくなった場合に行う債務整理ですが、債務整理には個別に任意整理・自己破産・個人再生など様々な方法があります。
そこで本記事では債務整理にはどんな種類があるのか、どうやって選ぶのか、個別にどの手続きが向いているのか、費用などについて解説します。
債務整理とは
債務整理とは、法律で認められた手続きや交渉によって、借金を整理(=借金返済を楽にする・免除してもらう)することをいいます。
借金のように特定の給付を求めることができる権利のことを債権といい、給付をしなければならない側からは債務といいます。借金は債権者に対して契約内容に従って金銭の給付が必要となるので債務です。
借金返済が厳しくなったとき、債権者と交渉をして条件を緩くしてもらったり、法律上で認められている制度を利用して、借金返済を楽にしたり免除してもらうことができます。借金は債務の一つであり、このような行為のことを債務整理と読んでいます。
債務整理の種類
債務整理として主なものには任意整理・自己破産・個人再生がありますが、ほかにも特定のケースで利用できるものも含めると次の制度があります。
債務整理の種類 | 内容 |
---|---|
任意整理 | 債権者と交渉をして借金を減額してもらって分割で返済する方法 |
自己破産 | 破産法に基づく手続きで借金を免責してもらう方法 |
個人再生 | 民事再生法に基づいて借金を減額してもらい分割で返済する方法 |
過払い金請求 | 払いすぎていた利息を返してもらう方法 |
特定調停 | 調停手続によって借金を減額してもらう方法 |
相続放棄 | 相続した借金について相続しないようにする方法 |
限定承認 | 相続した借金について遺産の範囲でしか相続しないようにする方法 |
時効援用 | 時効にかかっていることを主張して債務の消滅を主張する方法 |
それぞれどのような制度か詳しく解説します。
任意整理
任意整理とは、債権者と交渉をして借金を減額してもらって分割で返済する方法です。
貸金業者から借金をすると、毎月利息を付して返済する必要があるほか、返済が遅れると遅延損害金が付加されます。
また、長期間延滞すると、分割で払うことが認められる期限の利益を失い、一括請求されます。
任意整理は、この従来の契約内容について、債権者と交渉をして返済内容を軽くしてもらうものです。
交渉であれば、借金減額は交渉の結果次第になりそうですが、実務には「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」「多重債務者に対する任意整理を処理するための全国統一基準」に基づいて、利息・遅延損害金をカットした金額を分割して支払うという内容になっています。
参考:
任意整理において全国統一基準に従った和解に応じることを求める意見書|仙台弁護士会
「司法書士による任意整理の統一基準」を求める決議|日本司法書士連合会
任意整理のメリット
任意整理のメリットには次のものが挙げられます。
- 返済の総額が減額する
- 毎月の支払いが楽になる
- 都合の悪い債権者は除くことができる
もっとも大きいメリットは都合の悪い債権者は除くことができる点です。
例えば奨学金や商工ローンのように保証人がついている債務について債務整理を行うと、保証人に請求されることになります。
同様に住宅ローンやショッピングローンのように担保がついている債務について債務整理を行うと、抵当権を行使されたり物品を引き上げられます。
自己破産や個人再生ではすべての債務が対象となる一方で、手続きの対象になる債権者を選ぶことができます。
そのため、債務整理の中でも任意整理は、保証人への請求や引き上げを避けることができるというメリットがあります。
任意整理のデメリット
一方で任意整理には次のデメリットがあります。
- 他の債務整理に比べて借金の減額が少ない
- 返済ができないと利用できない
- 債権者の協力を得られないと利用できない
まず、借金の減額が他の債務整理に比べて少ないのがデメリットです。
自己破産だと債務は原則としてなくなり、個人再生でも大幅に減額されます。
一方で任意整理は元金よりも減額されることはほとんど無いので、主な3つの債務整理手続きの中では最も減額幅は少ないです。
また、任意整理は元金を返済できない場合には利用できません。
収入が少なく返済できる資金を用意できない場合には、自己破産・個人再生を利用する必要があります。
さらに、任意整理は債権者の協力が無いとできません。
ほとんどの貸金業者は任意整理には協力するのですが、一部の貸金業者や貸金業者ではない個人などについては任意整理で協力を得られない可能性があり、この場合任意整理はできません。
債務整理の種類として任意整理が向いている人
債務整理の中でも任意整理が向いている人は次の通りです。
- 毎月の支払いができる余裕がある(目安として元金を36回で分割した額)
- 保証人に迷惑をかけたくない
- 引き上げられてくない物がある
- 自己破産による制限が困る
任意整理は毎月の支払いができることが条件なので、毎月の支払いができる余裕があることが大前提です。
その上で保証人に迷惑をかけたくない、引き上げられたくない物がある、自己破産による職業制限などが困る場合に任意整理が向いています。
債務整理の種類として任意整理が向いていない人
一方で任意整理が向いていないのは次の人です。
- 毎月返済する払う余裕がない
- 収入に波があり管理が難しい
任意整理は36回~60回程度の分割払いを毎月続けていく必要があるので、長期に渡って支払える余裕がない場合には利用しないほうが良いでしょう。また、収入に波があるような場合できちんと管理して毎月支払い続けるのが難しい場合も同様です。
任意整理の費用
任意整理にかかる費用の内訳には次のものがあります。
- 相談料:債務整理の相談をするときに支払う報酬(相場:0円~30分5,000円)
- 着手金:依頼をするときに支払う報酬(相場:2万円~5万円/1件)
- 解決報酬金:貸金業者と交渉が終わったときに支払う報酬(相場:0円~2万円)
- 減額報酬:借金の減額に請求した場合の報酬(相場:0円~減額した分の10%)
任意整理の費用を安く依頼できる事務所として当サイトがおすすめなのがはたの法務事務所です。
参考:はたの法務事務所の口コミ評判は?詐欺や最悪の噂は本当か?依頼する場合の費用など調査|サイナビ
自己破産
自己破産とは、個人が破産法の手続きに従って、財産を債権者に配当し、残った債務を免責してもらう手続きです。
原則として債務が免責されるため、債務整理の主な3つの手続きの中でももっとも強力な手続きであるといえます。
財産を債権者に配当するということに心配になる方も多いのですが、一定の財産は保持することができ、生活に必要なものについて失うことなくやりなおせます。
自己破産のメリット
自己破産のメリットは、原則として債務が無くなることです。
任意整理・個人再生では手続き後に返済を続けなければなりませんが、自己破産ではその後に返済する必要がありません。
自己破産のデメリット
一方で自己破産には次のデメリットがあります。
- 厳格な手続きがある
- 手続きでたくさんの制約がある
自己破産のデメリットとして、厳格な手続きによることが挙げられます。
特定の債権者にだけ返済するなど、破産法の理念に沿わないことをすると、破産手続きが認められなくなることもあるので、かならず弁護士に依頼して行うようにしましょう。
債務整理の種類として自己破産が向いている人
債務整理の種類として自己破産が向いているのは次に当てはまる人です。
- 返済できる余裕がない
- 早く経済的に立て直したい
任意整理や個人再生のように、返済を継続しなければならない手続きでは返済できる余裕が必要で、その余裕がない場合には任意整理や個人再生が向いています。
また、自己破産では借金がすぐに無くなるので、早く経済的に立て直したい方にも向いています。
債務整理の種類として自己破産が向いてない人
債務整理の種類として自己破産が向いていないのは次のような人です。
- 自宅や高価な財産を手放したくない
- 自己破産で職業制限を受けると困る
自己破産をする場合には自宅や高額な財産がある場合は、換価されて債権者に配当されます。
そのため、これらをどうしても維持したい場合には自己破産は向きません。
また、宅建士・警備員・保険募集人など、債務整理で職業制限を受ける人は自己破産をすると仕事につけない・今の仕事を辞めざるを得なくので、自己破産は向きません。
自己破産の費用
自己破産にかかる費用は次の通りです。
- 弁護士・司法書士報酬
- 相談料:(相場:0円~30分5,000円)
- 着手金・報酬金(相場:それぞれ20万円~30万円、分けずに請求することもある)
- 裁判所に支払う費用
- 申立手数料:1,500円(収入印紙を購入する)
- 予納郵券:2,000円~4,000円(裁判所による)
- 予納金:約15,000円(裁判所による)
- 引継予納金:0円~50万円(手続きによる)
自己破産にかかる弁護士報酬の安さで選ぶなら、当サイトでは東京ロータス法律事務所をおすすめします。
参考:東京ロータス法律事務所の口コミ評判は?5chや知恵袋の声や費用も調査!
個人再生
個人再生とは、民事再生法の手続きに従って債務を減額して、残る債務を分割で弁済する手続きです。
民事再生法の個人が利用することを前提とした章の規定に基づいて行われるもので、借金を大幅に減額することができます。
個人再生の特徴に、住宅ローンで購入した家がある場合に、従来どおり住宅ローンの支払いを続けつつ、残った債務について債務整理ができることが挙げられます。
個人再生のメリット
個人再生のメリットとしては次のものが挙げられます。
- 任意整理よりも借金が減る
- 住宅ローンをそのままにしておける
- 自己破産のような制限は無い
個人再生は住宅ローンを別に扱えるので、住宅ローン債権者に抵当権を行使されて家から出ていなければならなくなる、ということを避けられるメリットがあります。
また、自己破産のような制限が無いので、自己破産をすると特定の仕事につけない(例:警備員・宅建士・保険募集人)という場合でも利用できます。
個人再生のデメリット
一方で個人再生のデメリットとして次のものが挙げられます。
- 厳格な手続きによる
- きちんと返済できる必要がある
個人再生も自己破産と同様に厳格な手続きによります。
また、手続き後の返済をきちんとできる場合でなければならず、収入が無いような場合には利用できません。
債務整理の種類として個人再生が向いている人
債務整理の種類として個人再生が向いている人には次の人が挙げられます。
- 任意整理では支払えない
- 住宅ローンで購入した住宅を守りたい
- 自己破産手続きの職業制限が困る
任意整理における元金の分割弁済は今の収入では払えないけども、減額してもらえれば支払える場合には個人再生が向いています。
また、住宅資金特別条項で住宅ローンで購入した住宅を守ることができる・自己破産をすると職業制限に困る場合にも個人再生は向いています。
個人再生の費用
個人再生にかかる費用は次の通りです。
- 弁護士・司法書士報酬
- 相談料:(相場:0円~30分5,000円)
- 着手金:報酬金(相場:それぞれ20万円~30万円分けずに請求することもある)
- 裁判所に支払う費用
- 申立手数料:(10,000円:収入印紙を購入する)
- 予納郵券:(2,000~4,000円:裁判所による)
- 予納金:(約15,000円:裁判所による)
- 引継予納金:(0円~50万円:裁判所による)
個人再生についてはひばり法律事務所が当サイトのおすすめです。
参考:ひばり(旧名村)法律事務所の口コミ評判は?任意整理の費用や怪しいという声も調査!
過払い金請求
過払い金請求とは、払い過ぎていた利息を返してもらう方法をいいます。
利息の制限を定める利息制限法・出資法があるのですが、高利貸しについて刑事罰を定める出資法が利息制限法よりも高かったときに発生したもので、利息制限法を超える利息で返済していた場合に請求できるものです。
参考:
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律|e-Gov法令検索
過払い金請求のメリット
過払い金請求のメリットとしては、ブラックリストにならずに債務整理ができることが挙げられます。
ブラックリストとは信用情報に債務整理をしたことが記録され、新たな借入・クレジットカードの作成・携帯電話やスマートフォンの分割購入などができなくなります。
過払い金請求ができる場合には、法的にはもう債務がない状況であり、ブラックリストにはなりません。
金融庁でも「コメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」において「なお、現在、過払い金返還に係る情報を登録している信用情報機関では、完済後になされた過払い金の返還については登録していないと承知しています。」としています。
過払い金請求のデメリット
過払い金請求をするにあたっては慎重に行動する必要があります。
過払い金請求は2010年6月18日に現在の出資法に改正されるまで発生していました。
過払い金が最後に発生する状態からすでに15年が経過しており、時効で消滅しているものも多いです。
そのため、過払い金を請求する場合には、慎重に検討する必要があり、過払い金請求に詳しい弁護士・司法書士に相談するのが望ましいでしょう。
債務整理の方法として過払い金請求が向いている人・向いていない人
債務整理の方法として過払い金請求が向いている人は、2010年6月17日以前から消費者金融・信販会社から借入をしていた人です。
過払い金は出資法の改正によって2010年6月18日以降は発生していないので、それより前に借入をしていたことが前提条件となるためです。
そのため、借入歴が2010年6月18日よりも浅い場合には、過払い金請求は向いていません。
過払い金請求にかかる費用
過払い金請求にかかる費用は次の通りです。
- 相談料(相場:30分5,000円程度)
- 着手金(相場:0円~50,000円/件程度)
- 解決報酬金(相場:0円~20,000円/件程度)
- 過払い金報酬金(相場:取り戻した額の20%・裁判を起こした場合は25%)
過払い金請求はアヴァンス法務事務所がおすすめです。
参考:アヴァンス法務事務所の評判・口コミは?任意整理の流れや支払い遅れの対処法も
特定調停
特定調停は、借金問題について調停によって解決する方法です。
裁判所での紛争解決手続きに、調停委員会が間に立って当事者から主張や事情を効きながら解決をする、民事調停という手続きがあります。
参考:民事調停手続|法務省
この民事調停手続きについて、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(特定調停法)という法律を定めて、借金解決のために使いやすくしたのが特定調停です。
参考:特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律|e-Gov法令検索
人気お笑い芸人カンニング竹山さんが利用したことを公表しており、通常は弁護士・司法書士に依頼しないで自分で申し立てを行う方が多いです。
参考:カンニング竹山 地獄の借金生活…その一方で相方は驚きの秘策で完済 おぎやはぎの2人も驚がく|スポニチ
もっとも、任意整理がうまくいかない場合に弁護士・司法書士が例外的に利用することもあります。
特定調停のメリット
特定調停のメリットは、弁護士・司法書士に依頼しなくても借金の減額ができることです。
特定調停は基本的に自分で申し立てをするもので、弁護士・司法書士に依頼しません。
そのため、弁護士・司法書士に依頼する費用が発生しません。
特定調停のデメリット
特定調停のデメリットとして次の2つが挙げられます。
- 調停委員次第では満足な結果が得られない場合も
- 支払いが遅れるとすぐに強制執行される
調停委員は民事法分野に詳しい民間人が選任されますが、債務整理に詳しい人ではない場合、その場合利息や遅延損害金をつけない運用について詳しくないことがあります。
任意整理に近い結果を得られることがある特定調停ですが、債務整理に詳しくない人が調停委員になると満足な結果となりません。
また特定調停では調停調書が作成されるので、もし支払いが遅れると債権者が調停調書を使ってすぐに強制執行をすることができます。
任意整理ではあらためて裁判を起こさなければならないことと比べても、時間の余裕がない場合があります。
債務整理の種類として特定調停に向いている人・向いていない人
特定調停に向いているのは次の人です。
- 弁護士・司法書士に依頼したくない
- 調停委員ときちんと交渉ができる
- 支払うための余裕がある
どうしても弁護士・司法書士への費用が払いたくない方で、調停委員にきちんと交渉をすることができ、毎月の返済をきちんと行う余裕があれば特定調停は向いているといえるでしょう。
逆に調停委員ときちんと交渉をする自信がない、毎月返済をする金銭的余裕がない場合には特定調停は向いていません。
特定調停の費用
特定調停にかかる費用は次の通りです。
- 裁判所に支払う費用
- 申立手数料:500円/社(収入印紙で収める)
- 予納郵券:500円/社
相続放棄
相続放棄とは、民法の規定に基づいて、相続人ではなかったと取り扱ってもらう手続きです。
民法第938条以下に定められている手続きで、相続放棄をすることで、最初から相続人ではなかったとみなされます(民法第939条)。
借金も相続財産として相続の対象となり、自分がした借金ではなくても相続によって借金を負うことがあります。
この場合に相続放棄をすることで、借金を免れることができます。
借金を相続することになった場合に特有の制度なので、誰でも利用できるわけではありません。
参考:民法|e-Gov法令検索
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットとしては次のものが挙げられます。
- 借金を相続しなくて良い
- ブラックリストにならない
- 比較的手続きが簡単
相続放棄をすれば借金を相続しなくて済み、任意整理や個人再生のように分割でも返済する必要はありません。
また、本人が借入したわけではないので、相続放棄をしてもブラックリストにはなりません。
さらに、相続放棄の手続きは自己破産・個人再生・限定承認に比べると比較的カンタンで、自分で対応したり、弁護士・司法書士に依頼する場合でも比較的安価で依頼ができます。
相続放棄のデメリット
一方で相続放棄のデメリットとしては次のものが挙げられます。
- 一切相続できない
- 相続の順位がかわりトラブルになる
相続放棄では最初から相続人ではなかったと取り扱われるため、一切相続できません。
お金をかけてでも実家の所有権だけは欲しい、形見分けで欲しいものがある、という場合には相続放棄ができません。
また相続放棄をすると相続人の順位が移ることがあります。
たとえば、被相続人に子および兄弟姉妹がいる場合に、子が全員相続放棄をすると子は全員最初から相続人ではなかったことになるので、兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹が急に借金を相続することになり、親族間でトラブルとなることもあるので注意が必要です。
債務整理の種類として相続放棄が向いている人
相続放棄が向いているのは次の人です。
- 借金を相続した
- 相続したいものはない
大前提になるのが借金を相続したことであり、その中でも相続したいものはない場合には相続放棄が向いています。
借金を相続した場合でも、相続したいものがある場合には相続放棄は向いておらず、限定承認が向いています。
相続放棄の費用
相続放棄にかかる費用は次の通りです。
- 弁護士・司法書士への報酬
- 相談料:0円~30分5,000円
- 手続き代行:20,000円~50,000円程度
- 裁判所に支払う費用
- 申立手数料:800円(収入印紙)
- 予納郵券:400円~1,000円程度(裁判所による)
相続放棄について当サイトではサンク法律事務所をおすすめしています。
参考:サンク総合法律事務所の口コミ評判は?任意整理が高いか徹底比較!
限定承認
限定承認とは、相続した借金について遺産の範囲でしか相続しないようにする方法です。
民法第922条以下に定められている方法で、相続放棄と同じように借金を相続しないための方法です。
そのため、借金を相続した場合、自分の借金として債務整理するほかに、相続放棄・限定承認をするという3つの方法が利用可能です。
もっとも相続放棄・限定承認は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に行うのが原則なので注意しましょう。
限定承認のメリット
限定承認のメリットには次のものがあります。
- 相続した借金を自分で負担することがない
- 一定の財産を残せる可能性がある。
限定承認は相続放棄と同様に相続した借金を自分で負担することがありません。
また、相続放棄と異なり、売却する相続財産を優先的に購入できる先買権を行使できるので、金銭を用意できるのであれば相続財産を相続することができます。
限定承認のデメリット
一方で限定承認のデメリットには次のものが挙げられます。
- 相続人全員で行わなければならない
- 手続きは面倒である
限定承認は相続人全員で行わなければならず、相続人の足並みが揃わないと利用ができません。
また、手続きは相続放棄に比べると面倒であることもデメリットの一つです。
債務整理の種類として限定承認が向いている人
債務整理の種類として限定承認が向いているのは次の人です。
- 借金を相続した
- 相続したい財産がある
借金を相続した場合で相続したい財産がある場合、限定承認が向いています。
相続したい財産がない場合には手続きが複雑である限定承認は向いておらず、相続放棄によるのが良いでしょう。
限定承認の費用
限定承認にかかる費用は次の通りです。
- 弁護士・司法書士への費用
- 相談料:0円~30分5,000円
- 着手金:30万円程度
- 報酬金:10万円程度
- 裁判所に支払う費用
- 申立手数料:800円(収入印紙)
- 官報公告費用:40,000円程度(裁判所による)
- 予納郵券:1,000円~4,000円程度
限定承認については当サイトではベリーベスト法律事務所をおすすめします。
参考:【やばい?】ベリーベスト法律事務所の評判・口コミから怪しくないか、他の事務所との費用の比較などを調査
時効援用
時効援用とは、時効にかかっていることを主張して債務の消滅を主張する方法です。
借金は借入をしている方からすると債務で、貸付している側からすると債権となります。
債権は一定の期間が過ぎた後に債務者が時効援用をすると、時効で消滅して請求できなくなる旨が民法に定められています(民法第166条)。
借金をしてその後に返済できなくなったことが原因で長期間請求を無視していた場合に、借金が時効にかかっていることがあり、時効援用することで債務が消滅することがあります。
時効援用については2020年4月1日の改正後には原則5年となりましたが、それ以前は5年の場合や10年の場合があるので、注意をしましょう。
参考:消滅時効について|法務省
時効援用のメリット
時効援用のメリットには次のものがあります。
- 借金が無くなる
- 手続きが簡単
時効の援用とは、債務者が債権者に対して時効の利益を受ける旨の意思表示をすることをいい、手続きとしては内容証明を送るのが通常です。
裁判所への申し立てなどの手続きに比べると簡単に借金が無くなるので、その分弁護士・司法書士費用も節約できます。
時効援用のデメリット
一方で時効援用のデメリットとしては次のものがあります。
- 利用できるケースは少ない
- 要件を満たしているかを慎重に検討する必要がある
時効援用は、5年の時効期間が経過しているか、その他の要件を満たしているかを慎重に確認する必要があります。
特に過去に裁判を起こしていたような場合には、時効の更新の制度によって時効期間のカウントの時期が伸びますので、5年経過しているだけでは時効が完成していないこともあるので注意が必要です。
時効援用が向いている人
時効援用が向いている人は、5年以上(一部債権については10年)最後に支払ってから経過している人です。
これより短い期間しか経過していない・途中で裁判を起こされた、という場合には、時効援用は向いていません。
どの種類の債務整理を利用するかは弁護士・司法書士に相談して決める
どの種類の債務整理を利用するかは、弁護士・司法書士に相談して決めます。
例えば「どうしても自己破産だけはしたくない」という希望があったとしても、収入が無い状況では返済を前提とする任意整理・個人再生は利用できません。
どの種類の債務整理がその人に向いているかは、収入・支出・債務額・その他の事情を検討してみないとわからないのが実情です。
そのため、まずは弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。